黒より黒い「深黒」という
世界一の黒

2017年の2月に行った第一回の展示会でいただいた最も多かったお言葉。「冠衣の黒はないのか?」。とてもたくさんの方に意見をいただいた。しかし、その時点で冠衣の黒を商品化する算段はついていなかった。SANGOUの冠衣は伊勢木綿のキナリの反物を使っている。黒の反物を使用するとなると、反物の単価が跳ね上がってしまうのだ。その理由はキナリのものを黒に染める為に様々な工程が発生するのが理由だ。冠衣は原価設定をキナリ生地に合わせている為、伊勢木綿の黒反物を使用するとなると価格が倍近くになってしまう。それではなかなかにうまくない。
そんな理由で黒の冠衣は諦めていたのだが、ある先輩からいただいた一言で事は動き出した。「この冠衣を黒に製品染めしちゃえばいいんだよ」とのことだった。その際に「京都紋付」という黒染め専門の会社があることを教えていただいた。しかもただ黒に染めるのではないという。
京都紋付曰く、通常の衣類の黒は黒ではなく墨だと。本物の黒は、真っ黒に染めるのはうちにしかできない、というような会社であることを聞いた。
興味に狩られた菊田参号は早速京都紋付にアポイントをとり京都へ。行ってみると立派なのれんが出迎えてくれるなんとも雰囲気のある会社だった。
 名前の通り、京都で紋付を黒に染めること100年の歴史のある会社。出迎えていただいたのは4代目の荒川徹氏。出会い頭から熱さが体外に滲み出ているようなパワーを感じざるを得ない人物だった。
100年の歴史の中で、京都紋付の最も際たる技術が「深黒加工」という技術だ。これこそが京都紋付の黒が他のそれとは違うと言われる所以。簡単に説明すると黒に染めた後に、独自に開発した「深黒液」にて加工処理をする。その液体は驚くべきことに透明だという。つまり黒い液に浸して加工を施すのではないのだ。この加工によって、なぜ黒がより黒く見えるのかは「光の反射を抑える」ことで深い黒を実現しているのだという。

荒川氏とお話をさせていただく中で驚くべき内容に耳を疑った。もともと社員50名ほどでやっておられたのだが、昨今の着物業界の不況の煽りもあり、ここ数年で40名ほどが退職され、現在は9名でやっているということだった。しかし、100年やってきたその「黒に染める」という技術をなんとか絶やしてはならないという想いで、様々なものづくりに着手していく中、様々なメディアにも注目されるという素晴らしい結果を生み出している。
その中でも菊田参号が特に心を打たれた取り組みが「KURO FINE(クロフィネ)」という取り組みだ。愛着があるものの、長年の使用で汚れやシミが目立つようになってしまった衣類を「リユース」しようというのが「KUROFINE(クロフィネ)」のコンセプト。つまり、古くなった衣類を京都紋付の「深黒加工」で染めかえて、新しい表情になった衣類を再利用するということだ。一つのものを大事に長く使う。この精神はSANGOUの冠衣に通ずる。
10年着る前提のキナリの冠衣。その過程ではやはり汚れなどが付着してしまうこともあるだろう。そんな時は京都紋付の製品染めをして、黒冠衣に生まれ変わらせてまた着ることができる。もちろん最初から黒冠衣を着ていただくことも可能。京都紋付が製品染めを受けてくれた事で冠衣の「10年着れる」というテーマはより盤石のものとなったのだ。
日本人にとって大事な色である「黒」。なぜ日本人は正装の際は黒なのか。京都紋付の考え方は美しい。「黒とは単なる色ではありません。自身を消し、相手に礼を尽くすことを表明する為の美意識です。」ということだ。美意識。これは日本人に深く根付いている感覚だと感じる。我々現代の日本人が忘れてしまっている感覚。その美意識をもう一度取り戻すために、日本が誇る世界一の「黒」をあなたも纏いませんか? 

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