三百年の歴史を持つ
ちりめんの黒羽織

SANGOU MAGAZINEのvol.1をお持ちだろうか?もしお持ちの方は表紙を見ていただきたい。菊田参号が羽織っている羽織。あれは10年以上前に原宿の露店で購入したものだ。その当時、菊田参号はハットに下駄にデニムに羽織という格好をよくしていた。大人になるにつれ羽織の登場回数は極端に減り、最近は全く着なくなっていた。しかし今回のSANGOUの立ち上げの際に、テーマが「ラフに着れる着物」ということから、その当時着ていた羽織の存在を思い出し、撮影の際に使用、また展示会にて着用していた。
 この言葉も展示会の際にいただいた言葉なのだが、「冠衣の上に羽織、これを定番にしちゃえばいい、羽織作りなよ」というお言葉をいただいた。それは良いと早速羽織の生地を探し出す。着ていたものがちりめんのもので、その風合いが気に入っていたので、ちりめんの伝統工芸品を探し始めた。
それは京都にあった。京都の丹後ちりめんという300年の歴史をもつ生地だ。京都にある与謝野という土地で織られているシルクの高級なちりめん。調べていくうちに一つの織元に目が止まる。丹後ちりめん織元こばやし。目に止まった理由はそのうたい文句だ。「白生地専門」と書いてあった。お話を伺うと白生地にこだわって作っているため、染めるならば他で、ということだった。その職人魂に惚れ、とにかく現地に伺うことにした。

 与謝野は遠かった。京都といっても、日本海側のためとにかく遠かった。京都駅を出発してから電車に揺られること4時間。日本三景である天橋立が見えてくれば、もう近い。駅に降り立つと「着物の街与謝野へようこそ」の文字がお出迎え。東京からだとなかなかの旅路。いよいよ来たかと心も高ぶる。
 こう言ってはなんだが与謝野は田舎町だ。古き良き静かな雰囲気の町だった。ただ難儀したのは、駅を降りてから織元にいくまでの交通手段。駅からはタクシーに乗る予定だったが、駅前にタクシーはいない。バスもない。のでもちろん徒歩で向かう。小一時間ほど歩くと遂に到着。
 落ち着いた田舎町にこんな人相の人間が来てしまったというのに小林氏は暖かく出迎えていただいた。早速工場を見せていただくとその織り機の複雑な作りや動きに驚愕。丹後ちりめんの最大の特徴は糸に撚りをかけて反物を織るということ。縦糸と横糸の複雑な絡みによって繊細な柄を表現しているのだ。その織り工程は、、、実際に見ないとわからないと思われる。言葉での説明は非常に難しい。織りについて知りたい方はSANGOUのHPに動画があるのでご覧いただけたらと思う。

 腕によりをかけて○○する…などと言うが、これの語源は糸に撚りを掛けるから…ともいわれているという。手間ひまかけて物事をするといった意味合いから来ているのだろう。しかしそれだけ繊細に丁寧に恐ろしく手間暇をかけて丹後ちりめんは生み出されている。撚りの入った糸を織込み、後に精練の際に反物が縮み、シボを出し、反物にコシのある風合いがでる。
 その反物を京都紋付の深黒加工で染め上げる。そうやってSANGOUの羽織は贅沢に作られている。ラフに着れる着物。高価ではあるが一生付き合える価値のある羽織である。本格的な和装は敷居が高いと感じている方は、この羽織をオススメする。デニムに気軽に羽織って、まずは着物をラフに楽しんで欲しい。